5%以内に入ることの意味

 シュンペーター(オーストリア生れの理論経済学者)は、人間を3種類に分類し、5%の人が起業家(アントルプルヌール)であり、起業家によって経済は発展すると説いた。それは、5%の起業家のみが、① 新しい財を生産し、 ② 新しい生産方法を採用し、 ③ 新しい市場を編成でき、 ④ 新しい原材料市場の開発と ⑤ 新しい経営組織の実現ができるからである。と説いている。

 若き頃、私はシュンペーターにふれ、会計人として5%以内に入ることの意味を考えたものである。その後、創造経営協会の薄衣佐吉先生の思想・学問に影響を受け5%は事業として「限界企業」以上の規模を目指すことで、シュンペーターの表現することを具現化することであると理解した。

 平成13年迄は、日本の総事業者の5%のみが限界企業以上の経営者の割合であり、その後、平成24年には7.5%の経営者が起業家(シュンペーターのいう)で、現在では5%以内に入るためには小企業(50~99人)以上の企業経営者とならなければ起業家とはいえない状況になっている。シュンペーターも50年以上前の学者であり、その意味でも、限界企業以上の事業規模にすれば、いわゆる「起業家」となり、社会を変え経済を発展させることに貢献できるものと思われる。

環境変化に取り残されない組織とは

 昭和38年(東京オリンピックの前年)従事員規模4人以下の「生業組織」は日本の総事業所の75.1%を占めていた。ところが、平成24年(オリンピックから48年後)には「生業」の割合は58.7%へと16.4%減少した。すなわち、環境変化の激しい社会にあって、事業経営は生業的組織では成り立たなくなってきていることの現われだと思われる。

 戦後の日本の景気を支えた「家族的な職場の和」から、IT革命以後の「個」の重視に社会環境が変化したのである。最近では「護送船団方式」や「日の丸ニッポン」という言葉も聞かれなくなり、その代わりに「ベンチャー」や「アントレプレナー」(起業家)という言葉が台頭し、個の独立を促し始めている。

 1990年代中頃まで企業の人事制度は、年功序列が続いていて、社員も一つの職場で頑張れば必ず出世できるという希望を保ちながら、組織に所属することで動機を維持していたともいえる。しかし「失われた20年」が進むにつれ、徐々に成果主義や業績評価制度が取り入れられ、それとともに年功序列のシステムも少しずつ組織の中から姿を消しつつある。

 こうした社会背景から、組織での個の能力発揮と、他社との連帯や連携による目標達成が同時に求められ、「チームビルディング」が注目されるようになった。「チームビルディング」とは、「より良い関係を築きながら、共通の目的や目標を達成するための活動」のことで、真に組織による、チームとしての目標を達成することの重要さを指す言葉である。「生業組織」における「親父」の命令一下、指示通り行動する組織では社会の環境変化にとり残されて行ってしまうのである。

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